【青森県 国民健康保険大間病院より】本州最北端の僻地医療1~陸の孤島にある病院事情~

2021.05.19

青森県の大間町と言えば、私が真っ先に思い浮ぶのは『大間のマグロ』や『本州最北端の場所』です。そんな大間町にある大間病院で私は8ヵ月間活動をしていました。その活動期間を通して自分の中に追加された大間町は…『陸の孤島』でした。
今回はどうして陸の孤島と感じたのかお話したいと思います。

まず、大間町の位置ですが、地図でいうと〇の位置にあります。

大間病院は大間町と両隣にある佐井村、風間浦村を含む、人口約9000人の地域の方々の健康を守る病院です。外来診療・病棟看護・救急医療・訪問看護・在宅診療(在宅看取りも含む)・退院支援・リハビリテーション・血液透析・予防接種などの保健活動を行っています。

<陸の孤島と感じたとき~その①:移動に時間が必要!~>
大間病院は内科診療が主であり、大間病院で対応困難な症例の場合、近隣のむつ市という隣町の病院へ行くことが多いです。むつ市までは車で約1時間かかり、救急車で搬送する場合、1時間弱要します(むつ市内に入るまで信号はほとんどありません)。公共の交通機関はバスのみで、バスの場合、むつ市まで1時間半かかり、本数も多くありません(2時間に1本程度)。私が大間病院で勤務している間も何度か救急車に同乗する機会がありました。また、私が勤務していた期間、脳血管疾患で入院する方も多く、専門医の診察とMRI検査のためにむつ市へ行き受診する症例も少なくありませんでした。
むつ市の病院でも対応ができない場合、青森市(車で約3時間)や弘前市(車で約4時間)の県立病院や大学病院へ行くこともあります。緊急性が高く、ドクターヘリが稼働しているときであれば、空路で移動しますが、天候不良や時間帯によっては陸路で移動をすることも過去にはあったそうです。
現在、大間病院では透析を行っていますが、以前は設備がなく青森市まで透析のため通院していた方もいたそうです。

<陸の孤島と感じたとき~その②:海を渡って受診?!~>
私は北海道に住んでいたので、大間町に行くときは、函館市からフェリーで移動しました。函館市から大間町まではフェリーで1時間半の行程です。
 大間病院で勤務後に知ったのは、大間町の方々は函館市の病院に通院する方が少なくないということでした。大間町・函館市の間は片道1時間半なので、日帰りで通院することは可能ですが、フェリーは1日2往復しかないので、乗り遅れたり欠航になってしまえば函館市での滞在を余儀なくされます。通院は時間との闘いです。大間町から函館市に通院のために往復する場合、フェリー会社では『通院割』という割引サービスがあります。そういったサービスがあることからも、通院の足としてフェリーを利用する方が多いのだろうなという印象を受けました。

 自分自身の経験上、勤務していた病棟で対応できない症例の場合、総合病院であれば同じ建物内で移動するだけでしたし、そうでない場合だったとしても移動に片道1時間かかるような環境にいたことはありませんでした。また、青森県の方が海を越え、北海道の病院へ通院するという状況がわたしにとってとても不思議な感覚でした。以上、私が大間町を陸の孤島と感じた理由です。
 大間病院での活動を通して、自分が経験した環境が当たり前ではないことを改めて感じました。今回の経験を通して、僻地にある病院が置かれている状況について少しでも感じとってもらえたらと思います。

山本 泉

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