患者さんの幸せを第一に考えるということ

2018.11.27

山梨市立牧丘病院 活動レポート ジャパンハート 離島 看護師

今回も受け持ち患者さんについて書きます。

 

基礎疾患があり、重症感染症で治療も奏功していない状態でした。
前回の入院時も「自宅に帰りたい」とおっしゃり、最後のチャンスだからとサービスを入れ家族の協力を得ながら、なんとか帰ることができました。
今回ばかりはかなり状態が厳しく、本人は自宅に帰りたいだろうが、難しいだろうなと、今までの病院勤務で何度も感じてきたジレンマを感じていました。
そんな時、「もうやめにして帰りたい。」と言っているから、点滴はすべて終了にし、治療を撤退して家に帰ってはどうかと医師から提案がありました。私は、大大大賛成でした。
先生からそんなことを言ってもらえることが新鮮というか驚きでした。
牧丘病院の先生は患者さんの幸せを第一に考えてくれる、こんな素敵な先生ばかりということをすっかり忘れておりました。

 

そして朝、ずっと付き添いをされている患者さんの病室のもとへ行きました。
しかし、患者さんの目は開かず、家族さんも「やっぱり、家でずっと付いていられないし、お母さん(妻)ひとりになると不安。家は寒いし、病院のほうがいいかな。」と。

私も、患者さんの希望はおうちだったけど今帰っても本人はわからないかもしれない、残されるのはご家族だし、負担になってはいけないな、病室でご家族に囲まれているならそれも幸せなのかな、などと考えているうちに、何が幸せなのかわからなくなってきました。

 

そこで先輩方に相談しました。日勤帯の忙しい時間にもかかわらず、一緒に考えてくれ、素直にそのまま伝えて、もう一度話し合ってもらってはどうかと。

 

「今帰っても本人はわかるかわからないが、自宅に帰るのが本人の最後の望みだから、その選択で家族に悔いが残らないか。帰るなら最大限のサポートはする。病院で過ごすという選択も、もちろん尊重する。」

 

そして、一番私がはっとしたのは、「もしおうちで奥さんが気づいたときに息をしていなくても、それはそれで本望じゃないかな。」という言葉でした。今まで、最期の瞬間に家族が立ち会うことばかり気にしすぎていたのだと気づかされました。なんだかその言葉をきいて、力がすとんと抜けた気がしました。

 

その後家族さんは「やっぱり家に連れて帰ることにしました。」と返事を下さり、日曜日でしたが、夜勤の先輩が早く出勤して救急車を運転してくれ、私も同乗しおうちに帰りました。すると、車内で目が開き、「奥さんが待ってますよ。」と話しかけると、しっかり頷かれました。

帰宅してから何回か先生や訪問看護師さんと同行しました。連日病院に付き添いで疲れ気味だった奥さんは、いつも通りかわいらしい割烹着で、「看護師さんが来てくれたよーお父さん。」と日常に戻られた印象でした。亡くなる前日には、患者さんのお母さんが織ってくれたという立派な着物を、奥さんが富士山のよく見えるお庭に干して準備をしてくれていました。よく晴れて、富士山も雪をかぶってとても奇麗でした。

 

今回こんな素敵な体験をさせてもらえたのは、患者さんの幸せを第一に考えてくれる牧丘病院の先生、先輩、訪問看護さん、そして家族さんのおかげで、そして何よりこの患者さんと出会えたことが私の宝物だと思います。さらに、最期はずっと関わってくれていた歯科衛生士さんと歯科医師さんが、折れてしまった歯を義歯につけてくれ、お口もきれいに旅立てたというエピソードを知り、さらに感激しました。

 

山梨市立牧丘病院 活動レポート ジャパンハート 離島 看護師

山梨市立牧丘病院  吉田裕香

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