【青森県 大間病院より】初めての雪国での生活と、大間病院での一員としてのへき地医療の実際(愛知県出身/看護師9年目)
2023年2月、海の所々に氷が張るほどの寒さの中で降り立った大間の地。その日は津軽海峡の波と風を強く受ける大間でも、特に穏やかな晴れの日でした。
フェリーターミナルで吉田看護師長にお出迎えいただき、大間の町を案内してもらいながら回ると、到着するまでの緊張した心が一気に和らいでいきました。
大間は思っていたよりも更に小さな町でしたが、スーパー、コンビニ、薬局、ホームセンター、雑貨屋といった生活に必要な物に不自由は無いように思いました。
しかしこの地域は、海と山に囲まれた本州最北端の地。他の地域と繋がる道は限られており、大間病院から一番近くの総合病院でも1時間近く、さらに高度な医療を受けるには3時間ほどかけて青森市まで行かなくてはならない、何よりその限られた道が分断されれば一気に陸の孤島になる、そんな場所でした。
朝起きると雪の積もり具合を窓から確認することから始まり、仕事終わりには車に分厚く降り積もった雪をおろして帰路につく、毎日スノーブーツで出勤し、訪問や搬送に出るときは白衣のままスノーブーツを履いてダウンを羽織る。初めて過ごす雪国の生活、中部地方から来た私には全てが新鮮でした。
大間病院での勤務を始める時「私は外から来た人。大間の地域の人の考え方、生き方を知って、それに合わせて看護に携わっていこう」と考えていました。
大間のスタッフとは少し違う立場から大間の地を見つめるような自分の姿勢でしたが、働き初めてすぐ、その考えは少し違っていたかもしれないと痛感しました。
他のスタッフは皆さん、私の看護師としての経験や価値観を受け止めてくれて、ひとりの看護スタッフとして格差無く接してくださります。
患者さん、家族の方々からも、言葉の違いで他の地方から来ていることは気づかれますが、そこを皮切りにして会話は広がり、看護師のひとりとして頼っていただけました。
「外の人」ではなく、「共に同じ方向を向いて頑張る一員」として、温かい人達に囲まれて看護ができることが毎日嬉しかったです。
看護業務の範囲は多岐に渡り、そのどれも病棟業務に限らず私も一スタッフとして経験させていただきました。
退院前訪問、転院搬送、訪問看護、透視下での処置などありましたが、胃瘻造設・交換についた時に改めて気づかされたのは、人的物的環境の整った場所では分業されていることでも、ここではすべて担っていることが当たり前ということです。
今まで放射線科や検査室に患者を出棟させお迎えに行くだけ、訪問の領域は訪問看護にお任せだった自分でしたが、患者や家族が経験すること全体通してサポートすることができ、看護師としてより視野が広がり成長しているのではないかと感じています。
馴染みの無い生活をしながら、この地域の馴染みのある事を知っていくことも楽みのひとつでした。
大間病院の医療圏である1町2ヵ村、大間町、佐井村、風間浦村はもちろん、雪の中の運転にも物怖じしなくなった頃から少しずつ雪解けし、少し遠出ができるようになったため、病院から貸していただいた車で青森各地へ美味しい物、絶景、温泉を堪能しに繰り出しました。
行く先々では、青森の面白くて接しやすく温かい人達との出会いがたくさんありました。名前も顔も知らない人と、急に会話が始まり笑い合ってお別れする、また出会うことは無いかもしれないけれど、そのひとつひとつが心に残る思い出です。
あれだけ深く積もっていた雪も無くなって本来の地形がわかり、ウグイスが鳴き、蕗の薹が芽生え、本州のニュースに遅れて桜が満開になり、桜が散って彩り豊かな緑が深まった大間の地にも、もう夏が来ます。
この地で半袖を着ている自分にまだ驚きが隠せません。大間に来て、四季の移り変わりを地元に居る頃よりも遥かに強く感じられて、心がより豊かになった気がしています。
この数ヵ月で沢山の出会いと経験を通して、僻地の厳しさと魅力を痛感しました。
引き続き自分を成長させてくださった大間病院と地域の皆様に感謝しながら、自分にできる最大限の看護の力を届けていきたいと思います。