女川でしか出会えない人やこころの医療を経験して。

2018年5月～10月まで、宮城県にある「女川町地域医療センター」で活動をさせていただきました。半年の活動中は、自分の今後の人生に影響を与えるほど本当に多くの事を体験して感じる時間となりました。
活動を支えてくださった医療センター職員の皆さま、地域の皆さまには本当に感謝しています。
ぜひ、もっと多くの人に女川の魅力を知ってもらいたいという思いから、現地での活動について紹介したいと思います。

 

女川と聞いて被災地支援や僻地支援をイメージして行くと意外と思っていたのと違う！と思うかもしれません。
確かに震災の爪あとは残っていますが7年の歳月をかけて復興は進み住民の方々も元の生活を取り戻しつつあります。よって例えば仮設訪問などの災害支援らしいことはしていません。
僻地と言っても電車や車で石巻の街まで30～40分ほど行けば何でも揃います。1時間半～2時間で大都会仙台に行けます。なのでこれから行ってみようと考えている方には支援に行くというより、女川を、地域医療を、感じに行ってほしいと思います。
ここでしか出会えないものや人、心があります。

 

私が活動していたのは診療所なのですが、実際にやっていた業務はその範囲を超えていて、オールマイティーに技術が身につきます。そして「女川町の住民が必要とするならば何とか実現しよう」という精神がしみついていて、関連職種と連絡をとり方法を検討、実行力も伴っています。

 

医療者が院内・外問わずフットワーク軽く地域に出て行くのも特徴です。情にも厚く、スタッフ間、患者さんとの距離もとっっても近いです。センター長（院長）や看護部長もいつも現場にいるため風通しが抜群に良いです。個人的には、元々の女川魂に、震災の被害を受けて一致団結した一体感が今でも地域住民の健康と生活を守る活力になっているのだろうと考察しています。

 

住民からすれば気軽に信頼のある医療者に相談ができたり、生活や健康について一緒に考えてくれる環境があって良い意味で医療へのハードルが低いと感じました。医療者からみても患者さんの背景をよく知り、本当に必要で効果的な援助を実現できる良い環境だと思います。

 

町やセンターとしての課題もありますが、基本的にはまさに理想的な地域医療の形になっているのではないかと感じ、もっとこうした活動が広まっていくことを心から願っています。

 

あと余談ですが、海鮮や日本酒がこれまでに行った地域のなかで一番安くて美味しいと思いました。是非ご賞味あれ！

 

私が実際に女川町地域医療センター（診療所）でやっていたこと。

①外来・病棟業務
病棟は慢性期、ターミナル期の高齢患者さんが多いです。外来も常時内科・小児科・外科、曜日によって皮膚科や整形外科・眼科も診ています。救急車も受け入れます。検査技師と薬剤師が1人ずつしかいないため普段から看護師が機械を回し、薬の用意をしてサポートします。

 

②離島出張診療
港から船に乗って、出島（月2回）と江島（月1回）へ出張診療に行きます。どちらも津波によって唯一の診療所を失ってしまったため、震災後から現在まで継続的に診療を行っています。

③健診
主に採血と診察介助、内視鏡の介助を担当し、状況に応じて聴力検査も看護師がします。

 

④訪問診療
定期的に訪問している患者さんは月20件程。それ以外に訪問看護や退院後で気になる患者さんの訪問や、具合が悪くて診察してもらいたいけど診療所までいけそうもないという患者さんがいると不定期で訪問しています。

 

⑤女川原子力発電所で産業健診
東北電力の職員だけではなく、原発に出入りする人すべてに健診をすることが決められています。診療所の産業医と共に月１・２回原発へ出向き、看護師は３０名前後の職員採血をします。

 

⑥地域ネットワーク会議
震災後、壊滅状態となった女川の医療福祉をどう立て直すか、住民の健康をどうすれば守れるのかを関係者が集まり週１回話し合いをしていました。その延長で現在は医療福祉の課題や問題を解決していく会議として月１回開催しています。

 

⑦町の座談会や健康まつり、健康講話に行き地域住民とお話
町とのつながりが深くの保健師などの町職員と協力して地域住民の方の健康推進や疾病予防事業に関わり、健康に関する相談にのったりしています。

他に、私は直接関わっていませんが訪問看護と病児病後児保育も積極的にやっています。